政権放棄の余波
福田康夫首相が誕生して1週間。経済界で話題になっているのが、安倍晋三前首相(53)に近いとされる経済人の「今後」だ。筆頭はウシオ電機の牛尾治朗会長(76)とJR東海の葛西敬之会長(66)。無責任な政権投げ出しで失脚しただけに、親安倍経済人にも逆風が吹くことが予想される。
「経済に弱い」とされる安倍前首相の“指南役”を任じていたのが、牛尾氏だ。2人が知り合ったのは、安倍氏が神戸製鋼所を退職し、外相などを歴任した父・晋太郎氏の秘書官になったころ。牛尾氏の長女・幸子さんが晋三氏の兄・寛信氏に嫁ぎ、家族ぐるみの付き合いとなった。
「牛尾氏は、あまりに近すぎるから前面に出ることはないと言っていたが、じっとしていられなかったようだ。新聞の首相動向の欄には、牛尾氏の名前がひんぱんに出てきた」(財界関係者)
2006年9月の安倍政権の発足早々、政府税制調査会の本間正明会長(当時、大阪大大学院教授)が公務員宿舎に知人女性を入居させていた問題で辞任。後任の会長選びが難航する中、安倍前首相に香西泰・日本経済研究センター特別顧問の起用をアドバイスしたのが牛尾氏だった。
「いろいろ口出ししてきた牛尾氏に対する政財界の反発は意外と強い」(同)という。
ウシオ電機・牛尾会長(左)JR東海・葛西会長(右)
一方、安倍氏の後ろ盾となった経済人の集まりといえば、2000年に発足した「四季の会」。JR東海の葛西会長が代表を務め、年4回会合を開いてきた。
葛西氏が東大で同級生だった与謝野馨前官房長官に「若い政治家の話を聞きたい」と提案。安倍氏は与謝野氏に誘われて会に出るようになった。葛西氏は、安倍政権の目玉だった教育再生会議のメンバーにもなった。
四季の会のメンバーは葛西氏のほか、三菱重工の西岡喬会長(71)、トヨタ自動車の張富士夫会長(70)、東京電力の勝俣恒久社長(67)、新日鉄の三村明夫社長(66)、東芝の岡村正会長(69)、野村ホールディングスの氏家純一会長(61)、みずほコーポレート銀行の斎藤宏頭取(63)、三菱商事の小島順彦社長(65)ら約20人。重厚長大産業を代表するそうそうたるメンバーである。
「財界本流は永田町に不安を抱いていたが、安倍氏が伝統的な基幹産業のトップと定期的会合をもつようになり、安倍政権に期待するようになっていった」と財界関係者は指摘する。そして四季の会の発言力が強まる。
今年6月、NHKの最高意思決定機関である経営委員会の新委員長に起用された古森重隆・富士フイルムホールディングス社長(68)は四季の会のメンバー。安倍人脈による官邸主導の人事だが、「四季の会が主導した人事」(放送関係者)といわれた。
日本経団連の御手洗冨士夫会長(72歳、キヤノン会長)も、安倍失脚でミソをつけた口だ。経済財政諮問会議の民間議員として安倍前首相を支え、首相外遊の際には3度にわたり大規模の経済使節団を編成し同行した。
「ビジネス一筋できた御手洗氏は、政界とのパイプは細い。そのため個人的パイプをつくろうとしたのだろうが、安倍首相への入れ込みは尋常ではなかった。死に体になっても支えようとした。あれだけ安倍内閣に傾斜した御手洗経団連では、民主党と関係を構築するのは難しいのでないか」(財界関係者)と危惧する声も挙がっている。
親安倍経済人は何かと苦労をしそうだ。
ZAKZAK 2007/10/02
どーせ適当にやってスグやめるんじゃないの??